vol.8

ある思考実験−利害関係を考える

update:2005/02/19


おことわり
これは単なる私的な思考実験です。現実に存在する何かについて語ったものではありません。
それを推測しようという試みは無駄であることを、あらかじめ申し上げておきます。


ある食堂を考えてみる。登場人物は、「お客さん」「店長」「板前」の3名である。ここでは、問題を単純化するために、お客さんは必ず一度に一名であると仮定する。(そんな食堂は存在しないが、問題のモデルが複雑になるのでおいておく。)

ここでお客さんがある料理を注文する。このとき、料理が出てくるまでの時間について、お客さんと店長の間で、大まかなやり取りがあるとする。

そして、その注文は店長から板前に伝えられ、料理が作られる。そして、再び店長の手によってお客さんの前に供されるわけである。


このときの初期状態は、下の図1である。


図1:基本タイムテーブル

ここで、縦軸に満足度をとって、それぞれの登場人物の満足度をプロットすることを試みる。


1.お客さんの場合
予想時間付近に提供されることが望ましい。しかしながら、それよりもあまりに早すぎると、不安を感じ、満足度は減少する。(例:「おいおい、いやに早すぎるぞ。チンしただけじゃねぇか?」)
予想時間より若干早いぐらいがちょうど良く、予想時間を過ぎると不満を感じ始め、最後には、店長に苦情を申し立て、帰ってしまう。(そして、二度と来ない。)
これを、上の図1上にプロットすると、以下のようになる。

図2:お客さんの満足度


2.店長の場合
これも同じように、予想時間付近に提供されることが望ましい。1のお客さんの場合と同様に、早すぎると不安を感じる(例:「おいおい、まじめにやってんのか?」)し、遅くなると不安を感じ始め、最後は、お客さんからの苦情により、不満足である。
なお、店長は「いつできます」といった都合上、予定時間通りの場合に、最も満足すると考えられる。また、お客さんの不機嫌な顔が店長を不安に陥れるということで、満足度の降下ポイントが若干遅めである。
(ただし、ここでの店長は、全うな人間の心を持った店長であり、お客さんの苦情を屁とも思わない、いまどき流行の連中ではないとする。そうしないと話が続かない。)
これをさらにプロットすると、以下のようになる。


図3:店長の満足度


3.板前の場合
予想時間付近に提供されることが望ましいが、自分でも納得できるものを供することが、その満足度に対する大きなパラメータである。この思考実験では、納得のいくものはでき得る前提である。
納得のいかないものを出すぐらいなら多少遅れても…とはいうものの、それにも程度がある。(こだわりすぎて遅くなってばかりいると店長にクビにされうるので。)この場合、以下のようになる。


図4:板前の満足度

ここまでの中では、多少のでこぼこはあるものの、三者の利害はほぼ一致する。


さて、ここからが実験である。ここで、生身の人間である板前に変えて、ロボットを導入する。このとき、そのロボットが作るものと板前が作るものには差が無いと仮定する。(現実としてはたまったものではないが。)なお、新たな登場人物として、ロボットリース会社が登場する。そして、そのロボットは、稼働時間単位でロボットリース会社に対して支払いが発生する。ロボットリース者は、当然のことながら、収入の増大=満足であるので、ある程度まで単調増加の傾向を示す。しかしながら、度が過ぎるとその店からの契約を失う恐れがあるので、当然満足度は減少する。
これを、先ほどの図4の上に描いてみる。(今までプロットした内容は、敢えて変更しない。)


図5:ロボットを投入した例


ここで問題となるのは、このモデルでは、ロボットリース社に対しては、「お客さんの満足=店長の満足=自分の満足」が成立しないという事です。つまり、登場人物の利害関係が一致しない状態です。


この状態で店長が「全般的に提供時間が長いので、短縮を図る」ことを意図し、それが市場ニーズ(=お客さんの満足度)に合致したとしても、ロボットリース社としては、短期的視点では稼働時間の減少となり、満足度の低下をもたらすことになります。したがって、その改善には、ロボットリース社は腰が引けることになります。
これに対するロボットリース社の次の手は…

と、言う選択肢が考えられます。しかし、それらは店長がやりたいことと、どう(前向きな)関係があるのでしょうか?店長が代弁する「お客さんの満足度」の向上に、これはどのように貢献されるのでしょう?


まとめ:登場人物の利害関係は一致する必要がある。一致しない状態を受け入れているのであれば、それは変化に対する阻害要因になる恐れがある。



なお、これらの図表は、「ペイントブラシ」でのマウスとキーボードだけの手書きです。

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